○食糧自給率向上に向け

 

 エネルギー、環境、そして食糧が世界的な課題となっています。

 食糧は、増え続ける需要(消費)に供給(生産)が追いつかなくなっています。米、麦、大豆、トウモロコシなどの穀物の需給バランスが不安定となっています。人口増、経済の発展による需要の増加に、燃料であるエタノール生産向けの穀物需要が加わっています。供給面では豪州の大干ばつなどが大きく影響しています。これに原油高が加わり、穀物の国際価格が高騰を続けています。食料輸出国の中には、国内需要を優先させるため、輸出制限や禁輸をする国も出てきました。

価格高騰を受け、米国、EUなどは麦などの生産調整をやめて増産に乗り出すなど供給不足は緩和されてくるとの見方もありますが、穀物価格がこれまでのような水準にもどることはなく、高止まりするであろうとの見方が支配的です。

こうした中、あらためてわが国の食料生産、食料安全保障のあり方が問われています。

わが国の自給率は39%(オリジナルカロリーベース)。先進国の中では抜きんでて低い数値です。農地面積は減少の一途とたどっています。基幹的農業従事者の6割は65歳以上。わが国の農業、農村は高齢者によって支えています。

こうした中、「自給率を上げろ!」の声が高まっています。声が高まるのは、当然だと思います。

ご飯の消費拡大など食生活を変えることで自給率を上げることも可能です。現在、1人当たりの米の消費量は年間61㎏。40年前の約半分です。あと5㎏消費を増やせば自給率はそれだけで2%上がります。

同時に、輸入に多くを依存する小麦、大豆など穀物の国内生産を増やすことが必要です。わが国には遊休農地がたくさんあります。また、二毛作が可能な地域もあります。こうした農地資源などを有効に活用することで、輸入に多くを依存する農産物を相当程度増産できます。最近、大きな注目を集めているのが米粉であります。輸入小麦の一定部分を米粉に置き換えることができれば、自給率の向上にもつながります。

問題は、それにはコストがかかることです。

穀物の国際価格が高騰したとはいえ、いずれの穀物についても、国内生産費との間には依然としてかなりの差があります。こうした穀物を国内で生産するには、この差を誰かが補填する必要があります。

ここで「誰かが」と書きましたが、主体は国(国民)です。そして、これを実行する手段が、所得補償、あるいは直接支払いといわれる制度です。

昨年の参議院選挙後の臨時国会で、民主党が参議院に提出した農業者戸別所得補償法案(以下「戸別所得法案」という。)は、この直接支払い制度を本格的にわが国に導入しようとしたものです。

 

ちなみに、戸別所得法案は、臨時国会において参議院で可決、衆議院では今年の通常国会に持ち込まれ残念ながら最終的に否決、廃案となりました。議員提出の法案で、参議院可決、衆議院否決というわが国憲政史上初めて、という一見不名誉な、しかし、大変意義のある結果を残しました。

民主党は、参議院選挙による参議院の与野党逆転を受け、マニフェストの具体化の法案をまさに「法案の嵐」のごとく次々と国会(参議院)提出しました。そうした中、参議院を通過し、衆議院に送られ採決までされたのは、戸別所得法案だけでした。

審議も参議院で15時間、衆議院で15時間と長時間の審議となりました。野党提出の法案としては異例中の異例といっていい扱いを受けたことになります。私は法案提出者の責任者として、初めて国会の場で答弁する側に回りました。戸別所得法案に対する関心は極めて高く、与党とは激しい論争となりました。議論が過熱するあまり与野党間の中傷合戦となった局面もありましたが、全体としてはかなり中味の濃い議論ができたと思います。

与党は、法案には反対しました。しかし、論戦を通じ、農山村が直面する課題、農地の有効利用、自給率の向上のためにはどういう政策が本来必要なのかといった点については、与野党問わず、基本的に同じ視点に立てたのではないかと思います。

 

 世界中で、これほど食料、農業問題が注目されたことはないでしょう。洞爺湖サミットをはじめ、主要国の首脳が集まる国際会議においても大きなテーマとなっています。

 こうした中、わが国だけは、自給率が低下を続け、農地面積も縮小の一途をたどっています。自給率向上とは、すなわち農地の確保でもあります。政治的スローガンだけのために自給率の向上を掲げることはそろそろ止めるべきです。

 どうすれば、自給率の向上、農業確保が図れるのか、その財源の捻出方策を含め、具体的な方策の構築と実行が今こそ求められています。

 「戸別所得法案」は、もっぱら、その実施に必要として民主党が掲げた1兆円の財源が不透明、ということが否決の理由になっているようです。確かに国の財政をみれば1兆円もの予算が、簡単に毎年確保さえるような状況にはありません。しかし、だからといってここで思考がストップし、口で「農は国の基本」といいながら、実際には衰退するに任せてきたこれまでの農政を、このまま続けていいことにはなりません。

「戸別所得法案」の実現と、農業、林業、水産業の振興に先頭に立って取り組んで参ります。



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