この一年間の国政を振り返って

1.  小沢政権の実現に向けて(与野党の逆転した参議院 

昨年の参議院選挙によって、参議院における与野党の勢力が逆転をいたしました。衆議院は平成18年の郵政解散によって与党が圧勝し、3分の2以上の議席を占めています。衆参における与野党の勢力が異なるいわゆる「ねじれ」の状態が生じました。

 国会は衆議院と参議院という二院制となっております。両院が議決した場合に法律や予算が成立することを原則としています。しかし、衆議院と参議院は独立しており、異なる議決をすることは当然ありえます。そこで憲法では、こうした事態を想定し、衆議院の議決が参議院に優越するという原則を打ち立てています。具体的には以下のような規定となっています。

○予算は先に衆議院に提出されることが義務づけられています。参議院が衆議院と異なった議決をした場合、両院協議会での意見の一致がされないときは、衆議院の議決が国会の議決となります。参議院が、衆議院の可決した予算を受け取って30日以内に議決しないときも衆議院の議決が国会の議決となります。

○同意人事については両院の議決が一致しなければなりません。

○法律案についての提出先の順位についての規定はありません。法律案を衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をしたときは、衆議院のもとめによって両院協議会の開催ができます。また、参議院で否決された法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となるとされ、参議院が、衆議院で可決した法律案を受け取った後、60日以内に議決しないときには、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができます。

 国会は立法府といわれています。衆議院の議決が優先されるといっても、法律の制定、改正については衆議院と参議院はまったく対等の権限を有していることになります。ただ、参議院で否決した議案、もしくは衆議院から参議院に議案が送付されて60日間を経ても参議院において議決されない場合、衆議院において3分の2以上の賛成をもって再議決されれば、それは国会の議決になるという例外規定が設けられています。

 この規定は衆議院において、いずれかの政党あるいは会派が、3分の2以上の議席を占めるという特殊な状況においてしか機能しません。しかし、今の衆議院はまさしくこの「特殊な状態」にあるのです。

 参議院の民主党は、直近の民意は参議院に反映されており、衆議院における3分の2の再議決による法律の制定は、民意を無視するものであるとの立場をとりました。一方、3分の2による再議決は憲法に規定された衆議院の役割であり、権利であって、その行使の如何は衆議院が主体的に決定する、というのが衆議院の与党の立場でした。両者は国会のあり方について真っ向から対立しました。どちらの主張が正しいかは、憲法も国会法も何も規定していません。

 このことを含め次の解散総選挙によって国民が判断を下すことになります。

すなわち、

① 衆議院においても与野党逆転を実現し、政権交代を実現(「ねじれ」は解消)

② 引き続き自公が政権を担う(「ねじれ」は存続)のどちらかを選択していただくことになります。

一方、国政を巡っては様々な課題が山積みです。

○ 消えた年金問題、後期高齢者医療制度など国民の信頼を失った社会保障制度

○ 低下する食糧自給率、衰退する農業・農山村

○ 広がる所得格差、地域格差

○ ガソリンの暫定税率に象徴されるような、その役割を終え本来廃止すべき暫定税率を、既得権益との関わりを断ち切れず、古い税体系のまま存続されている税制

○ 官僚内閣制とも揶揄される政策・運営すべて官僚頼みの与党体質、一向に減らない官僚の不祥事などなど、小手先の改革などではどうにもならない課題が山積みとなっています。根本的な対策を講ずるためには、政権交代によって政権の枠組みを変える必要があることに多くの国民は既に気がついています。そうは言って、自民党もだめだけど、民主党も頼りにならない、という意識が国民の間にあったことも事実です。福田政権の支持率が下がり、自民党の支持率が下がったにもかかわらず、暫くの間、民主党の支持率が上向かなかったのは、このことがあったからだと思います。しかし、今や、民主党の支持率と自民党の支持率が逆転。その状況が維持されるというこれまでに全くみられなかった事態となっております。政治の基盤は大きく変わりつつあります。政治を変えるのは国民であります。それを実現する手段が選挙であります。次の解散総選挙はまさしくそのための選挙であります。そしてそれは、小沢政権実現のための選挙です。

2.  安倍総理の電撃的な退陣と福田政権の発足

 臨時国会に入り、参議院における所信表明演説の直後での退陣表明(平成19年9月12日)には、国内はもとより、世界がびっくりしたはずです。安倍さんは、退陣するタイミングを完全に間違えました。参議院の敗北と責任を取る形で退陣すべきでした。体調不良が原因とのことですが、どういう理由にせよ、国会の冒頭で政権を投げ出すというのは、総理の資質以前の問題と言われても仕方ありません。

 私は、安倍さんが官房長官をされていた時期から国会の予算委員会での答弁ぶりなどをみていましたが、失礼ながらまだまだ総理には早いのではないかと思っていました。目線の落ち着きのなさ、いらだちを率直に顔に出す「正直さ」など、気になっていました。残念ながら、結果がすべてを語っているように思います。

 ご本人も不本意だったとおもいます。同年代としてカムバックを期待します。ただし当面は謹慎しているべきでしょう。

 福田さんについても、「福田さんが総理?!」というのが、正直な感想でした。

後は、多くの説明は必要ないでしょう。首班指名は19年の9月15日でした。ちなみに、参議院における首班指名は小沢一郎代表でした。

 小泉さんが総理の時、私は、予算委員会で幕府政治に幕を降ろした徳川慶喜を例に引き、「「最後の将軍」になれ」と、言い放ったことがあります。どうやら、「最後の将軍」は、小泉さんではなく、福田さんであることが現実味を帯びてきたようです。言うまでもなく、それを決めるのは次の総選挙です。

3.  衆議院での再議決による法制定と二院制のあり方

 インド洋において、アフガニスタンでテロと戦う多国籍軍への補給支援を継続するか否かが(「テロ特措法」の延長)臨時国会の最大のテーマとなりました。戦場に向かう軍への燃料補給は武力の行使であり、集団的自衛権の発動は認めないとするわが国憲法に違反する、との立場などから民主党は最後まで反対の姿勢を貫きました。安倍総理の突然の辞任による国会の空転もあり、継続法案は廃案、「テロ特措法」は失効しました。インド洋の自衛隊は平成19年11月2日帰国の途につきました。

 一方、政府は、新法としていわゆる一年間の補給支援の再開、継続を規定した「補給支援特措法案」を国会に提出。11月12日には衆議院を通過しました。参議院に送られた法案は、貧困対策支援などを柱とした民主党提案の支援法案と合わせて徹底審議されました。臨時国会は大幅に延長され、年を越して1月11日に参議院で採決。民主党提出法案賛成、「補給支援特措法」は否決となりました。参議院の否決を受け、即日衆議院では、政府案に対する再議決を決行し、3分の2以上の賛成で可決、成立しました。

 補給活動は2月21日から再開されました。

 揮発油税などの自動車関係諸税の使途は、国、地方とも道路に特定されています。道路特定財源といわれる所以です。また、道路整備が遅れており、整備を急ぐ必要があるとの理由で、財源確保のため、本則税率(固定税率)に上乗せして主に5年間の暫定措置として税率(暫定税率)が加算されてきました(ガソリンでは1あたり国地方あわせて29円が本則税率として、さらに25円が暫定税率として賦課されています。)そして暫定税率の適用期間は、期限切れを迎える都度、自民党が政権を握る中、当然のように累次に渡って延長されてきました。しかし、今回、この適用期限が平成20年の3月31日で切れるに際し、その延長の可否が通常国会の最大のテーマとなりました。

 民主党は、

暫定税率といいながら30年間以上経過していること、
道路財源もピークを過ぎており、道路整備だけに特化した特定財 源を設ける根 拠が薄れてきていること
ガソリン価格の高騰が国民生活を圧迫していること
暫定税率の廃止は、2.6兆円の減税となり、特に自家用車への依存度が高い 地方にとって減税効果が高いこと、

 などと理由として、暫定税率の適用延長に反対の立場を貫きました。そして参議院での国会運営技術によって暫定税率を失効させ、ガソリン価格は暫定税率分の25円が値下げとなりました。

 しかし、衆議院は延長法案の衆議院通過後60日を経過したとして、憲法の

いわゆる「みなし規定」を適用し、4月30日に3分の2による再議決を行い、暫定税率を復活させました。この結果、ガソリン価格は25円の「値上げ」となりました。

 5月13日には、自動車関係諸税の使途を道路関係に特定するいわゆる「道路財源法」が、12日の参議院での否決を受けた衆議院の再議決によって成立しました。同時に福田総理は、使途を道路関係に限定することは平成20年度限りとし、以後は一般財源化することを宣言し、この旨閣議決定までしました。

 しかし、

① 税制全体のあり方とともに暫定税率をどうするのか

② 一般財源化を今の自公政権は本当にやるのか

   一般財源化した場合、その使途はどうなるのか

 といった点については、来年度予算編成時までに結論をだすとして、先送りされました。次の臨時国会以降、与野党間の大きな争点になることは間違いありません。

  また、国、地方あわせて2.6兆円の税収に直結する国会での暫定税率の扱いをめぐっては看過すべきではない結果を残しました。

 予算は成立したけれども、その裏打ちとなる暫定税率を規定した歳入関連法案が成立せず、予算と法律との間に不一致が生じたことです。歳出予算の裏打ちとなる歳入予算の見込みが予算成立時に立たなかったのです。憲政史上において極めて異例なことです。国会がどのような状況にあっても、また、どのような激しい議論があっても、予算を成立させ、予算執行が円滑に出来る環境を用意することは、国会が果たすべき最重要任務です。その観点からすればあってはならないことです。

 三本の法案が、国会議決の例外的な手続きといわれる再議決によって成立したことは、衆議院、参議院という二院制の下で運営される国会のあり方についての検討を迫ることになりました。

 こうしたことを踏まえ、以下のような点については国会議員の責任において早急に検討し結論を出すべきであると感じています。

① 予算と予算関連法案、特に歳入関連法案の政府の国会提出時期を含む国会で の審議のあり方

② 二院制のあり方、特に参議院のあるべき姿

なお、こういった点を含め、まずは参議院民主党内での勉強をしようという目的で、私が提唱者となっての勉強会を立ち上げ、通常国会の会期中に外部の専門家を呼んでの勉強を数回行いました。今後とも活動を続けていく予定です。

4.  後期高齢者医療制度と問責決議の可決

 75歳以上のいわゆる後期高齢者を対象とした医療制度が今年から動き出しました。この法律は、3年前の郵政解散選挙後の臨時国会で、与党の強行採決によって制定された「問題法律」でした。
具体的には次のような点が当初から指摘されていました。

    75歳以上を対象とした独立の医療制度は、リスクを分散させ、加入者の負 担を平準化させるという保険本来のあり方に反し、持続可能性・安定的運営が 課題として残る。

    後期高齢者の保険料、現役世代の負担となる「後期高齢者支援金」(国保、 被用者保険からの拠出金)の引き上げがなければ、後期高齢者医療の給付が抑 制される可能性がある。

    平成20年4月より、後期高齢者医療制度の保険料が、すべての75歳以上 の高齢者に課され、年金からの天引き開始。高齢者の生活を脅かす。

    保険料の均等割(被保険者(加入者)全員が均等に負担)の低所得者への低 減措置につき、保険料は個人に課せられるのに、軽減措置適用の基礎となる所 得は世帯単位で判定されるため、世帯の中に収入の高い方がいる場合、軽減措 置が受けられなくなってしまう可能性がある。

    後期高齢者診療科(一人の医師が慢性疾患等の患者を継続的に管理すること を評価)では、主病は一つという考えの下、診療科を算定できる医療機関を主 病である慢性疾患の診療を行う医療機関のみに限定しているので、医療機関の 連携が崩れる。

    後期高齢者の心身の特性を一律に当てはめ、年齢で区別することは、個人差 の大きい医療に妥当性か極めて疑問。

    包括払い制度(診療報酬を月額一定の6千円、患者負担は6百円)の採用に より、手厚い医療行為を行うほど、医療機関の負担が増える仕組みとなり、必 要な検査すら抑制され、医療の質の低下を招くことにつながりかねない。

平成20年の法施行に伴い、こうした問題が現実のものとして明らかになったことで、制度に対する様々な批判が、高齢者のみならず、国民各層から噴出しました。5月に行われた山口2区の補欠選挙では大きな争点となり、制度の廃止を掲げた民主党候補が圧勝しました。

この制度に対しての国民の不信感は、政府に対する不信感を含め極めて大きくなっており、その場しのぎの対応では払拭できるものではありません。国民からの信頼の得られない制度は、まず廃止するのが筋です。その上で、制度の再構築を行う必要があります。遠回りのようですが、それが最善だと思います。参議院の民主党は他の野党会派とも連携し、 後期高齢者医療制度への対応のまずさなどを理由として福田総理に対する問責決議案を6月11日に国会提出。 賛成多数で可決されました。総理に対してのはじめての問責決議の可決でした。 参議院における総理に対する問責決議は衆議院における不信任決議に相当し、本来かなり重大な意味を持ちます。 ただ、不信任決議と異なり、内閣総辞職や解散といった強制力を持ちません。 どうやら、福田総理は問責決議を無視する決意のようです。問責決議が妥当であったかどうか、それを可決した参議院の責任も含め、次の総選挙で国民の判断を受けることになります。

 

5.  価格の高騰

 原油価格が高騰しており、市場最高価格の更新が続いています。中国、インドなどの国々からの需要増大が主たる原因といわれています。
世界的な金余り現象を反映し、投機マネーが石油取引市場に大量に流れ込んでいることも大きな原因となっています。

 原油価格が上がれば、いずれ供給生産は増えるでしょうが、 原油価格が元に戻ることはないと言われています。安い石油の時代が終わったかもしれません。埋蔵されている石油の中で、低コストで採掘できる油田は、 少なくなってきているといわれています。エタノールなど代替エネルギーの開発も急がれますが、石油が高くなってきたからこそ脚光を浴びているのであって、代替エネルギーが安いということではありません。世界に冠たる省エネ、炭酸ガス発生抑制などの技術を有しているわが国が、世界をリードしていかなければなりません。その技術の発展、継承のための教育投資は益々重要になってきます。  食糧の価格も高騰を続けました。ここでも需要の増大に生産が追いつかなくなってきています。 豪州などの干ばつも大きく影響しています。食糧の安定的な確保はエネルギーとならんで世界の課題となりました。自給率39㌫と極端に低いわが国が、 今後どのような政策を展開するか決断するときに来ています。 高い石油、食糧が私どもの生活に今後どのような影響をもたらすのか、日本の、そして世界の経済はどのように変わっていくのか、これまでに経験したことのない状況に世界は入ったと言えます。

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